ぜんまい仕掛け

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2015年 07月 13日

つづきの ゆめ(その2)


(※つづきの ゆめ(その1)は →→→ コチラ



6月中旬、『レトロスペース・坂会館』館長さんによるトークショー第2回目の
お知らせハガキが届いた。

4月末の第1回目トークショー受付時に、
「次回のお知らせを送りますので、宛名面にご自分の名前と住所を書いてください」
と手渡された、あの時のハガキだった。
宛名面の、自分の名前が自筆であるハガキは
受け取ると何だか妙な感じがするものだ。

届いたお知らせハガキの裏面には、開催日時に加えて
今なおレトロスペースと会社(社長)側との対立が続いている旨が記されていた。


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そもそも、このことを知ったのは4月...ネット上にその話が挙がっていた。
「『レトロスペース・坂会館』が4月いっぱいで立ち退きになるようだ」と。

驚き慌て、ネットで更なる情報を入手すべく検索しながらも
「いや、これは真意のほどを確かめるならば直接電話をかけるべき」と思いなおした。

迷惑になるやもと躊躇いながらも、レトロスペース坂さんに電話をかけた。
電話口ではスタッフの女性Nさん、が、とても丁寧に状況を教えてくださった。
その際に、館長さんのトークショーが開催される事を知り、
第1回目のトークショーに伺えたという流れであった。



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「誤解されているかたが多いんですよ」と、スタッフの女性がおっしゃるとおり
バス通りから建物の外観を見る限りでは、坂栄養食品の社長さんとレトロスペースの館長さんが
同一人物と思いたくなるのは致し方がない気もする。

さらに坂栄養食品の社長さんは今春、世代交代されたそうで、
現社長はレトロスペース館長さんの甥にあたる20代のお若い方であるらしい。
果たして、レトロスペースの存在はビスケット販売に本当にマイナスイメージなのだろうか?
意見は真っ向から対立しているようで、もちろんそれぞれのお立場での主張があるのだろう。


「身内同士のもめ事は、マスコミで取り上げてもらえない」と館長さんがおっしゃっている。
現在はお元気な館長さんも、昭和18年生まれの、70代のお人である。
ご体調を崩されたりしたら、レトロスペースの存続は危なくなるだろう。

会社側とレトロ側がそれぞれの持ち味を生かしながら
ビスケットの売り上げ増につなげることって不可能なのだろうか?
代表的商品である、しおA字フライビスケットやラインサンドには
旧くからのファンが大勢いらっしゃるだろうけれど。
いっそ、加えて「巨乳ビスケット」とか「シークレット袋とじカード入り」とか、
ユニークな商品が登場したらネットやメディアを通じて話題になり、
ヒットしそうな気もするのだが。
レトロスペースにもカフェを併設して(※昔はレストランもありました)
ビスケットバイキングとか、2階はアダルトテイストでコスプレの日があったり
撮影会の日があったり。BGMは昭和歌謡だよなぁ...
...なんていうことは、ド素人の自分が考えるような簡単なものではないのだろうけれど。
しかしビスケット会社に あのような貴重なスペースが隣接している環境、
日本全国探してもおそらくは坂さんだけだろうから...
実に勿体ないと、思えて仕方がないのだ。



そんな経緯を夫にもちょくちょく伝えていたので、
もともと「懐かしいモノ」系が好きなことも手伝って夫はトークショーにも興味を示したらしい。
「行ってみようかな...」と、積極的とまではいかないけれど
久しぶりにあの濃厚な空気にも触れたかったのか、夫が言う。
仕事もなかなか休めない状況だったので、行きは別々に出発、私が先に列車で札幌へ。
夫は仕事を終えてから、遅れて車で会場へ向かったのだった。


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第1回目のトークショーでもそうであったように、館長さんの話は慎ましく穏やかで、
しかし聞き手の想像力に挑んでくるような深いエロが織り込まれている。

リアル映像で伝わるものよりも、それははるかに淫靡であり、
記憶の器に留まるように思える。



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第2回目のトークショーの会場は、普段はクローズしている2階。
このフロアの人形たちは、時が止まっているかのような日々の静かな空間に
違う空気が流れ込んでくることに、果たして戸惑いを覚えていただろうか。
人形世界の会話が聞こえてきそうな、しかし聞いてしまうと戻れなくなるかも、と
私は衝動と葛藤に 咄嗟に蓋をする。


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館長さんのトークショー、夫はどう感じただろうか。

イベントの帰り道に車内でお互いの感想などを話す、ということは殆どしない私達夫婦。
それがいつものことなので、この日もほぼ無言のままに帰宅した。
それまでの数日間、夫はかなり睡眠不足を強いられる勤務態勢だったので、
帰宅後はあたふたとコンビニ弁当の夕食を済ませて就寝。

「今夜は夢を見ない。絶対、見ない。この間のようには、決してならない。」
眠りに入る自分に言い聞かせて、それから数時間後。



ものすごい叫び声に、目が覚めた。

「夢か?」

いや、夢ではなかった。


隣りで寝ている夫が、いまだかつて聞いたことのない叫び声をあげていたのだ。
結婚して二十数年、夫の寝言というのを聞いたのは2回、3回程度である。
夢を見た話すら、殆ど聞いたためしがない。
その夫が、一体どんな恐ろしい夢を見たらそんなにまで恐怖に怯えた声が
出せるのであろうかという、言葉にならない声を発していた。

「声をかけて起こそうか...」とも考えたが、
呼びかけたらその一瞬に更に大声で驚かれるかも、と思いなおした。
その大声で、隣室の鳥達がパニックを起こしそうな気がしたからだ。


夢というのはそう長い時間見ているものではないから、夫の叫びもほどなくして治まった。

「あの空間から、何かを連れてきたのかな...」
寝室の暗闇の中で、レトロスペースにひっそりと並んでいた
数えきれないほどの人形たちの顔を思い描く。


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朝、いつもと変わらぬ表情で朝刊を広げる夫に背後から尋ねてみる。

「夢の、内容覚えてる?」

夫はきょとんとしていた。
「夢? ...なんの??」



よかった。
夢は、夢で、完結させられていたようだ。

夜中、夫が叫んだ瞬間に起こせば「リアル夢」の内容を聞けただろうけれど。
“あちらの世界”は知らずにいた方が、
おそらくその方が

平静でいられるのであろう...この世の私達は。


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by Okamekikurin | 2015-07-13 23:55 | イベント | Comments(0)


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