2015年 12月 04日

財布がない


帰りの列車に乗って座席に腰を下ろしてすぐさま、
バッグから「甘栗」を取り出した。
朝、札幌へ向かう前に東室蘭駅のキオスクで買ったものだ。

(メーカーによっては指がべたつくタイプの甘栗もあるんだよなぁ
ウェットティッシュは持ってこなかったよなぁ...
それにしてもやっぱり函館行きは室蘭行きの列車よりも混むものなんだなぁ)
などなどと心の中でつぶやきながら、栗を頬張って。

「んーと、お財布は、どっち(※バッグor買い物袋)にしまったんだっけな」と
とりあえず、バッグの中をのぞき込む。

バッグの中に、財布は、見当たらず。

(大丸で買った食料品を詰め込んだ袋に一緒に入れていたっけ)

手の甲がべたつくのが嫌だったので
栗の袋の内側には触れないように気を付けながら
底に身(実)を寄せ合う栗に指先を伸ばす。

(いや、待てよ。買い物袋の中を見ておこう)


デパ地下で買った食材・惣菜とメンタルクリニックからもらってきた薬
そんな諸々の入ったビニルや紙の袋が買い物袋の中にいくつも折り重なっていたが
肝心の、財布は見当たらない。

(ん~、バッグの脇のポケットとかくぼみに入ってしまったかな)

「財布が存在しない」という思考には、至らずに
相変わらず栗を食べ続けながら。


もう一度、バッグの中から見直してみる。
折れ曲がった死角、ファスナーのついた領域、普段は入れないようなポケット
とりあえず、くまなく見る。

財布は、ない。

とすると、やっぱり買い物袋の中か...
夕食用にと思って買い求めた惣菜やら蒲鉾、
ガサガサとそれらの袋を崩して「あいだ」を見る。
全ての、下。それらの、横。
どこにも、財布はない。



少しばかり、胸が「どくん」とした。

それでも相変わらず、私は栗を食べていた...が。


「ちょ、ちょ、ちょっと~! 栗、食べてる場合じゃないンじゃない??」



胸の「どくん」が「どっくんどっくん」に、変わった。
もしや、もしかして、もしかしなくても、
私ってば財布、今、持ってないってこと???????????


パニック、勃発。
引き返したい、札幌。
が、列車は既にガタンゴトンと動いているわけで。


冷静に、冷静に、冷静になれよ自分。
まだどこか、見落としている箇所、見忘れている箇所があるかもだ。
いや、そうじゃないと困るのだ。
バッグじゃなくて、自分の横、足元、どっかに落としているとか。
冷静に、冷静に、冷静に見なおそう。
もちつけ、いや、落ち着け、自分。



バッグの、中、外ポケット、内ポケット、サイドポケット、
買い物袋、メンタルクリニックでもらった薬の入ったビニル袋

すべて、開けてみる。財布が収まりきらない小さな領域も、見る。
....ない。 完全に、パーフェクトに、「ない」に決定だ。 ちーん。



さてさて、どうしたもんか。
「ない」ことがわかった。
まずは、「どこで」財布を落としたか(置き忘れたか)を考えよう。
そして、財布の中身(届け出が必要なアレコレ)を思い出さねばならないのだな...


ふと、列車客室内の、自分の座席の周りをぐるり、見た。
斜め後方の男性と目が合ったが、この男性もまさか目の前のオバサンが
財布紛失して気絶しそうに動揺しているなんて思ってもみないよね。
(でも私は一体どんな表情をしていたのだろう...)
とりあえず、挙動不審なオバサン、ということにはなっていないようだ。
(いや、そんなこと気にしてる場合じゃないってさね)

静かな客室内に、列車の音だけが規則正しく響いている。



(最後に、財布からお金を取り出したのは、どこだ...)

「今」の自分から、行動をしゅるしゅると過去へと巻き戻す。
トイレに立ち寄ったのは、改札抜けてからか??
あそこで財布は出していない、はず...

クリニックに行ったあと、Yドバシに腕時計の電池を交換しに行って、
駅前の銀行に通帳の住所変更をしに行って...

(そうだ! 列車に乗る前に、最後に財布を出したのはスタバだ!)


では、スタバのどこで、財布と生き別れになったのだ...


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自分がいましがたとってきた行動だというのに
情けないほどに、記憶のなんと曖昧なことか...

スタバで、どうして財布が落ちることになったのだ???

鼓動が速いこと、手が震えていること、とにかく嫌な感覚が
全身を包む中で、目を閉じて考える。



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(あぁ、あのときか...)

我が行動を、脳内で映像化してよみがえらせる。


スタバで私は、釣銭を入れた財布と、珈琲とスコーンの乗った盆を手に
空いていた角のテーブル席に腰掛けた。
電池交換して、秒針がランダムに飛ぶことがなくなった腕時計を見て安心...
しようとして、驚いたのだ。

(時刻が、1時間ずれている???)


受け取ってきた腕時計の時刻が、ちょうどピッタリ1時間、遅れていたのだ。
ちなみに電池交換に出す前は、秒針が飛ぶようになってきたので
(いよいよ時間も遅れがちになるだろうから、その前に)と
札幌に来たついでに交換に出したわけで、さっきまでは時刻そのものには
狂いがなかったに、だ。
担当してくれた方が、うっかりミスをされてしまったのだろう。
忙しいだろうから、まぁ、仕方ないよなぁ。


スマホの時刻と照らし合わせて、やはり腕時計が間違っていると
確信したのだが、一瞬は焦って「列車に乗り遅れるか?」と驚いたのだ。



(そうだ、あの時だ...
テーブルの上の財布をバッグにしまいかけたのを
咄嗟に膝の横に置いて、腕時計を凝視してしまったのだ。
そしてその後、自分の注意が時計にいってしまい、財布の存在を
忘れてしまったのだ...)


...とすると、財布はスタバの椅子?あるいは床???



あの時、隣のボックス席には向かい合って高校生のカップルが座っていた。
生クリームやら甘そうなものがたっぷり詰め込まれた
冷たいアレンジ珈琲のようなのを飲んでいたっけな。
私が立ち上がったあと、あのカップルが財布を見つけてくれただろうか?
スタッフに届けてくれたりしただろうか?
いや、そのまま持ち帰っただろうか???

さらにその隣には、男性が一人で珈琲を飲んでいて、
向かいにはシニア層の女性二人がお喋りにはなを咲かせていた。



「財布を、スタッフに届ける」
「財布を、こっそり持ち帰る」


どっちだ? どっちだ? さぁ、どっちだ????

私ならば、絶対に届けるけれど、なにせ都会の札幌、
財布をそのまま自分のバッグに忍ばせる人だって少なくないだろう。



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一刻も早く、スタバに電話をかけて確認してみたい。
しかし、ここは列車の中...

デッキで電話すると、ついつい列車の音に負けじと声を大きくしてしまうから
客室内に声が筒抜けなんだよなぁ...
そしたら客席の人たちが「あぁ、あのオバサン、サツエキで財布落としたのかぁ
気の毒に、それは まずもって 戻らないよなぁ」
って思われるに違いないよなぁ、そんなのヤだしなぁ。

やっぱ、列車を降りてからかぁ。電話確認するのは。



悶々と考えていると、列車がけたたましく汽笛(クラクション?)を鳴らした。
断続的に鳴らしつつ、急ブレーキもかけている。

「ぐぇ。な、なななな、なんだ???人身事故か???」

この期に及んで、災難on災難か...

通路側の座席に座っていた私は、上半身を斜めに通路にはみ出させて、
前方、運転席から先の、外の様子をうかがう。
乗った客席が、1号車の2番という位置だったため、
運転席横のガラス越しに、進行方向の景色がよく見えた。


線路の上に、黒い物体。
あれはもしや.....熊、か!?


熊と思しき物体は、走りだすでもなくとてもスローモーに
ゆっくりゆっくりと線路から外れて茂みの中へ消えていった。


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(よかった。これでもしも列車があの熊を轢いてしまったら
列車は著しく遅れることになるわけで...)

これ以上のパニックはごめんだよなぁと思いながら
すでに私は相当吐きそうになっていたのだった。


(つづく)



(※画像の撮影日・場所は本文とは関係ありません。)







by Okamekikurin | 2015-12-04 19:41 | ツブヤキ | Comments(12)
Commented by 二重かっことじ at 2015-12-04 19:58 x
ドキドキする。引き込まれた。ノンフィクションだし。続きは、どうなる?
Commented by ベチ at 2015-12-04 20:17 x
栗とスリじゃない事を願ってます。
写真、とってもいいですね。
Commented by sada at 2015-12-04 20:38 x
凄い!!話に、ずんずんと引き込まれて行く!!
どうなるこの先、気になって今夜は眠れない夜に(笑う))
Commented by こたつ猫 at 2015-12-04 22:18 x
う~~ん、流石はノンフィクション。

話がリアル。
早く、続きを・・・・
Commented by Okamekikurin at 2015-12-05 07:26
★二重かっことじさん★
いつも有難うございますっ(*´▽`*)
今日は帰宅が深夜になる予定なので、つづきは明日以降アップさせていただきます!

カッコとじさんにヨロシクお伝えくださいませネ~( *´艸`)
Commented by Okamekikurin at 2015-12-05 07:27
★ベチさん★
ぉおおおっ!
栗とスリ!!!! ナイスです、冴えてますっ、ベチさん(^^♪
...しかしアレですね、私ってよっぽど栗好きなんですね(笑)

日ごろ、なんとな~~く撮っている街フォトを、こんな場面で使えるとは( ;∀;)
Commented by Okamekikurin at 2015-12-05 07:28
★sadaさん★
眠れない夜、かぁ...
そういえばsadaさんの歌う泉谷しげるを聴いてみたい♪♪♪

今日は滝川にライヴ応援に行くので、つづきのアップは明日以降です~。
天気が心配だわ...(;´・ω・)
Commented by Okamekikurin at 2015-12-05 07:29
★こたつ猫さん★
師走に身も心も財布も、木枯らしぴゅーぴゅーにはなりたくないものです(/_;)

パソコン前に座る時間がなかなか取れず、次の拙ブログ更新は明日以降になります~。
お忙しいでしょうけれど、お仕事の合間に、是非また見にきてくださいませネ(*^^*)
Commented by same0303 at 2015-12-05 15:51
Kikurinさま

おつです(´◉◞౪◟◉)
サイフを首から下げる or チェーンつけるですかねぇ。。。
Commented by Okamekikurin at 2015-12-06 06:12
★same0303さん★
昔むかし、祖母が編んでくれたミトン(当時は「ぼっこ手袋」と言っていたw)は、
落とさないようにと二つをくさり編みで繋いでいたっけと思い出しました(笑)

財布とスマホを鎖でつないで首から下げておけば安心かな~(*´▽`*)
Commented by same0303 at 2015-12-06 18:41
Kikurinさま

私もぼっこ手袋を思い出して書きました(笑)
鎖、Ah( ゚Д゚)違うシーンを想像してしまうのは職業病か。
Commented by Okamekikurin at 2015-12-07 00:37
★same0303さん★
「ぼっこ」に「鎖」といったら、もう決まりですね(謎www)



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